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尿失禁は、病名ではなく症候名であり、本人の意思とは関係なく尿を漏らしたり、排尿をしてしまう状態をいいます。1971年に第1回学会を開いた国際禁制学会ICS(International Continence Society)では「尿の不随意の漏れであって、他覚的に認められ、社会的または衛生上問題になる状態」と定義しています。これまで尿失禁は、致命的疾患でないことや患者の羞恥心から軽視される傾向にありました。しかし、近年、患者のQOLの重要性が認識され、また患者自身の認識も高まり、高齢化社会の到来と相まって、今や医療上大きな問題となっています。
腹圧性尿失禁は腹部に力が入った時に、すなわち、膀胱に尿が貯留した時のくしゃみ、重いものを持ち上げるとき、階段の昇降、大笑いやテニス、ジョギングなどの運動など瞬間的に腹圧がかかることにより膀胱内圧が尿道閉鎖圧を上回り、尿失禁を起こします。腹圧性尿失禁はほとんど女性に見られます。これは女性には前立腺が無く尿道が短いためです。また女性は骨盤底筋群を尿道、膣、直腸が貫いており、出産、肥満、加齢などにより骨盤底筋群が緩みやすいため膀胱、尿道が後下方に下がった状態になりやすいのです。急激な腹圧がかかることにより尿道はさらに後下方に移動し、尿道閉鎖圧の上昇が得られず尿失禁をおこします。この状態を過動性尿道といい、尿道括約筋自体の収縮力の低下によるものを不全尿道と呼びます。
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