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開腹手術と体腔鏡手術があります
手術が可能なのは、一般的に75歳未満で、病期A〜Bの早期がんまでです。開腹手術が一般的ですが、当院では術後の回復が早く、より体への負担が少ない腹腔鏡手術も積極的に行っております。どちらの手術も麻酔科医の管理の下、全身麻酔で行われ、前立腺、精嚢腺などを切除して膀胱と尿道をつなぎます。
開腹手術について
手術時間は3〜4時間を要します。まずリンパ節生検を行い転移の有無を調べます。手術中の病理診断で転移があった場合、リンパ節を取り除く範囲を広げます(郭清範囲を広げるといいます)。それでも転移が認められた場合には前立腺をとらずに終わる可能性もあります。転移が広範囲の場合、前立腺を摘除してもしなくてもその後の病気の進行(予後)に差はでません。そのような場合は手術後ホルモン療法、もしくは放射線療法を行うことになります。手術中の合併症としては出血が問題になります。出血するときは大量になることがあるので適宜輸血で対処することになります。手術後は1週間で尿道膀胱造影検査を行い、膀胱尿道部吻合部の状態を見ます。もしも吻合が十分でない場合、管を再留置します(吻合の状態が悪くても短期間の管の留置で自然に改善します)。手術後の安静は1〜2日で、食事は早くて翌日の夕方からはじめられます。また、リンパ液や血液を外に出すため下腹部にチューブを挿入します。このチューブの抜去時期はそこから出される液の量により異なります。およそ10日前後です。
開腹手術後の合併症
・性機能障害(インポテンス)
・尿失禁、傷口の感染
・尿路感染
・陰部のむくみ
などがあります。とくに前立腺は尿道括約筋と非常に近い位置にあるため、手術により、一時的に尿道括約筋のはたらきに影響を与え、尿失禁を起こしやすくなります。そして尿失禁は管を抜いたばかりの時期には大量にみられることがあります。時間とともに改善されますが(1〜3ヶ月)しばらくは失禁パッドを利用したり、内服治療を必要とすることがあります。インポテンスに関しては勃起にかかわる神経を前立腺と一緒に切除しますので改善は見込めません。ただし、がんの広がりが片側に限局している場合は、がんと反対側の勃起神経を残して前立腺を切除することも可能であり、性機能を温存することを希望する方に行われています。とくにまれですが肺梗塞は致命傷になることがあるため、当院では、手術前に弾性ストッキングを購入していただき着用、さらに手術後には血液を固まりにくくする薬(抗凝固剤等)を使用して予防を図っております。
また、手術後数日間個室で管理させていただきます。術中出血が多くなった場合集中治療室に入っていただく場合もあります。
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腹腔鏡下前立腺全摘除術について
下腹部に5カ所の穴を開け、そこに小さなカメラのついた器具、手術の操作をするための器具を入れます。そして、手術の視野を確保するために、二酸化炭素を注入し、モニターを見ながら手術を行います。麻酔は、麻酔科医師に依頼し、手術中の全身管理を行います。
手術時間は、前立腺全摘手術の場合、平均4時間程度で、麻酔時間も含めると6〜7時間を要します。
腹腔鏡手術については→
ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術については→
■手術後の経過
手術当日は安静、禁食となります。手術後、数日間は尿道に管が留置され、その後、尿道膀胱造影検査を行い、膀胱と尿道の境目の状態を見て、問題となるような漏れが生じていなければカテーテルを抜去します。術後、しばらくは尿失禁が続きますが、次第に回復します。この尿失禁は骨盤体操をすることで改善されます。また、尿管の管だけでなくリンパ液や血液を外に出すために下腹部にもチューブを挿入します。こちらはチューブから排出する液の量を見ながら、抜去する時期を決めます。歩行に関しては、通常、翌日から可能となります。腸の動き具合によって、1、2日のうちに食事も再開されます。
■術中の問題点
合併症として、出血・直腸に誤って穴を開けてしまうといったことがあります。これらは機器の操作ミスによって起こる場合があるほか、体内で臓器同士の癒着が激しく、それらをはがす時にやむをえなく起こってしまうこともあります。損傷が小さければ腹腔鏡下で修復しますが、出血量が多量になった場合や、腸の損傷が認められた場合には、開腹手術に途中で切り替えることもあります。状況に応じて輸血が必要となる場合もあります。
■腹腔鏡手術の合併症
性機能障害(インポテンス)、傷口からの菌の感染、尿路感染、陰部のむくみ、皮下気腫 、深部静脈血栓 、などが考えられます。これらが起こったときには、速やかに適切な処置を行わせていただきます。とくにまれですが肺梗塞は致命傷になることがあるため、当院では、術前に弾性ストッキングを購入していただき着用、さらに術後には血液を固まりにくくする薬(抗凝固剤等)を使用して予防を図っております。また、他臓器では、腹腔内から臓器を取り出す際に、がん細胞が撒き散らされてしまう(播種といいます)ことも報告されておりますが、前立腺がんでは、今のところそのような報告はされておりません。
■医療費について
2006年4月1日より腹腔鏡下前立腺全摘除術が保険適応となりました。 今回の保険適応に伴い厚生労働省より施設基準が以下のように示されました。当院では保険診療適応以前より厚生労働省より高度先進医療の認可施設として手術を行ってきましたが、今回の新たに示された施設基準(1)〜(5)のすべてを満たしています。
*腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術の施設基準
泌尿器科を標榜している病院であること
腹腔鏡下腎摘出術及び腹腔鏡下副腎摘出術を、術者として、合わせて20例以上実施した経験を有する常勤の泌尿器科の医師が2名以上いること。
当該手術に習熟した医師の指導の下に、当該手術を術者として10例以上実施した経験を有する常勤の泌尿器科の医師が1名以上いること。
当該保険医療機関において腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術が10例以上実施されていること。
関係学会から示されている指針に基づき適切に実施されていること。
■腹腔鏡下手術の良い点とリスク
利点
皮膚切開が少なく術後の痛みが少なく、回復も早いため入院期間が短かい
開腹手術に比べて出血量が少ない。
リスク
開腹手術に比べて、時間がかかる。
モニター越しに操作をするため高い技術を要する。
開腹手術に比べて視野が狭いため、予定外の部分(直腸など)を損傷してしまうことがある。その修復が困難な場合は、開腹手術に移行することになります。
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