早期前立腺がんは3つのパターンに分類されることが報告されています。55%は、がんが前立腺内に広く分布するタイプです。30%は、がんが一部に限局するタイプです。残りの15%は5ミリ以下のがんで、悪性度が低く、すぐに治療を行わず、経過観察になるタイプです。前立腺内に分布しているタイプと一部に限局しているタイプ(全体の85%)に対しては一般的には全摘、放射線治療による根治的治療が行われます。手術、放射線治療は根治を目的に行われますが、これらの治療では、排尿機能、性機能への影響は現在のところ、避けられません。Focal Therapyは、がんが一部に限局するタイプの患者さんを対象とした治療で、癌のみを治療する一方、正常な組織を可能な限り温存することで尿失禁、性機能の低下をできるだけ抑えることを目標としています。
MRI-TRUS融合画像ガイド下生検により診断された前立腺内部のがん局在
Focal Therapy後の前立腺
がん周囲のみが治療され、尿道、勃起の役割を担う神経は温存された。治療による排尿、および性機能への影響はほとんど認められなかった。
現在、私たちは、前立腺内にとどまる前立腺がんに対して、核磁気共鳴画像-経直腸的超音波画像 融合画像ガイド下前立腺生検によりがんの場所が診断された患者さんに対して、高密度焦点式超音波療法という超音波で前立腺内部のがんを選択的に治療可能な治療技術(写真1)をもちいて、Focal Therapyを行っています(写真2)。
私たちは、この治療を臨床研究として開始し、国内随一の症例数(140例, 2019年6月現在)を有しています。治療時間は30〜60分程度で、多くは治療後24時間以内に、尿道カテーテルを抜いて、退院が可能です。退院後の経過も良好で、患者さんへのアンケートでも、多くの患者さんで排尿障害や性機能障害などの合併症が少ないなど、生活の質を保つ新しい治療として、国内外から期待されています。
Focal Therapyのコンセプト